オスプレイ取材レポート(抜粋)
↑注目を集めているオスプレイの「転換モード」
航空ジャーナリスト坪田敦史です。
ここ数ヶ月、オスプレイに関するマスコミからの問い合わせが多いです。
7月に私のブログで紹介したV-22別冊本を読んだ方々からも反響を頂きました。マスコミはもとより、防衛省の方々も、この本を買って勉強していた!というのは内緒(?)
http://tsubotch.cocolog-nifty.com/skymonologue/2012/07/--36db.html
特にオートローテーションに関する見解は、私が書いた通りの内容で結果的に落ち着いています。9月の防衛省発表も、ほぼ同じ解釈です。
(だから言ったでしょうに。>森本大臣)
昨日、普天間基地にオスプレイが配備されたタイミングもあるので、私が雑誌に掲載した内容を少し紹介しておきましょう。
【坪田敦史のオスプレイ取材レポート(抜粋)】
パイロットの見地からすれば、ティルトローター機のメカニズムと飛行理論のすべてを新しく理解した上で、実際の操縦を覚えることは、それなりにハードルが高い。
コンピューターに頼らざるを得ない領域と、人間が持つアナログな感覚を常に組み合わせて、操縦操作を行わなければいけない。飛行機とヘリコプターの「いい部分」を取った以上、別の「難しさ」が生まれた航空機であることも、また疑いのない事実だ。
オスプレイのパイロットは、基本的にヘリコプターから機種転換する形で教育が行われており、同時に固定翼機での操縦訓練も実施しながら、ティルトローター機特有の操縦方法を学ぶシラバスになっている。ヘリコプターの操縦は、一般的に飛行機よりも難しい。したがって、ヘリコプターの飛行経験がない固定翼機のパイロットが、いきなりオスプレイの操縦を覚えるのは無理がある。
筆者はオスプレイが海兵隊部隊に配備されて間もない頃からアメリカで運用の様子を取材してきた。今年、日本で「オスプレイ騒ぎ」になる前に、訓練部隊のパイロットにインタビューしたことがあるので、少しだけ一問一答を紹介しよう。
【米軍パイロットへのインタビュー】
・オスプレイの操縦は難しいのですか?
「まあまあだね。操縦そのものは難しくない。でもまったく新しい機体だからシステムを覚えるのが大変だよ。あとは緊急時の操作が、ヘリコプターとは全然違う」
・オスプレイのパイロットを希望したのですか?
「私はシーナイト(CH-46)のパイロットだったから、必然的にオスプレイへの機種転換訓練に移った。それは仕方ないことさ」
・今はヘリコプターとオスプレイは、どちらが好きですか?
「オスプレイの操縦はエキサイティングだね。ただ訓練は易しくない。長年ヘリコプターを操縦してきたし、これからもヘリコプターを操縦することはあるよ。どちらも興味深いね」
・さきほど見た戦場のデモンストレーションでは、ほとんどが自動制御なのでしょうか?
「そうだ。ホバリングもツマミを回すだけで適切な高度を維持してくれる。システムは素晴らしいよ。ただ、飛行状態をモニターするのにパイロットは少しナーバスになっているかもしれない」
【まとめ】
航空関係者や専門家は、この機体について冷静に分析しているので、オスプレイが「危険な航空機」だとコメントする人はいない。開発時に事故を起こす例は珍しいことではないし、それだけをもって「欠陥機」などと評価することもない。
一方、一般のマスメディアや普天間配備を好ましく思わない人達は、やはり事故を起こした前例や騒音などを取り上げ、それを問題視する。これも当然のことだろう。
ただ、こうした賛否両論のぶつかり合いは、他方の意見や考え方をも受け入れる気持ちがなければ、発展的な議論にならず、あまり意味がない。
私は「ジャーナリスト」を名乗っているが、「航空」という専門分野においてマスコミや専門誌(読者/リスナー)に正しい知識を提供するのが仕事だ。
したがって、オスプレイの賛否に関するオピニオンはブログでは書かない。
「危険」だけが一人歩きしたマスコミ報道ではあったが、一連の「騒ぎ」は、市民が「オスプレイとは、どんな航空機なのか」を知る手がかりにはなったと思う。
オスプレイについては、〔イカロス出版〕発行の別冊本に詳しく記載しているので、一冊手に取って見て下さい。
V-22-オスプレイ-世界の名機シリーズ
----写真はすべて坪田敦史 撮影----
回転翼(ヘリコプター)モード

固定翼(=いわゆる飛行機)モード

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